2006/04/07
心と生命(3)
〜心は創るもの〜
心は創るもの
「一笑一少、一怒一老」という諺がある。
笑いは若さを保ち、病に対する免疫も高まるという。この笑いにプラスしてスキンシップがあったら、その効果は、さらに高まることだろう。
不安状態で心拍数の多い患者さんに、優しく声をかけたり、手を握ったり背中をさすることで、心拍数や血圧も落着くことがある。
スキンシップは、直接手で触れることで、その「癒し」の効果が出るのである。
老いて重い病態の人や、子どもなど、手をとってあげることで、その効果は大きい。
解剖学的には、手の感覚皮質は脳の中でもかなり広い領域を占めている。この手の刺激が脳に直接働きかける力は大きいといえる。
(大脳皮質の皮膚知覚、深部知覚《体性知覚野》)
ストレスと生体防御反応を調査した資料によると、好ましくない精神的ストレスを受けると、NK細胞(リンパ球の一種)の活性やホルモン分泌量などが変動し、がん疾患に対する自己抵抗性として重要なNK細胞の活性度は驚くほど敏感に低下したとある。
このような不快な精神的ストレスは、血中アドレナリンや血管収縮ホルモンのエンドセリンが増し、これが持続すれば動脈硬化につながる。
この精神的・肉体的ストレスが続くと、容易に、がん疾患、心筋梗塞、脳梗塞につながっても不思議ではないと専門家は記述している。
ヒトが心地よい運動をし、そこで血中の抗血栓物質(PGI2)や免疫増強物質を調べると、大部分の例で上昇しているという実際のデータもある。
今日、問題が多く、ストレス過剰の日々が私たちの毎日の生活にありすぎる。
そんななかで、楽しく体を動かせるか否か、仕事を少しでも楽しく行うことができるか否か、学習を楽しくすることができるか否か、たいへん難しいが、私たちは明日へ向かって生き抜くため、互いに知恵を出し合い、心を寄せあってやっていく努力をせねばならないと思う。
心の連帯感が持ちにくい時代だからこそ、そのことを強く意識して、歩むことが大事だと私はいいたい。
さて、私たちの脳だが、多くの部分に分かれているが、それぞれの部分が互いにケーブルでしっかりとつながれ、情報を交換しあっている。
後で詳しく述べるが、神経細胞(ニューロン:neuron)が網の目のように密にネットワークされ、情報が行き交うことで、心が生まれるといえる。
ここで注目すべきは、前に述べた、情報の内容だ。不快な情報ばかりが多くネットワークされれば、心は重く、私たちは不幸なことになろう。いかに情報を良くするか、私たち一人ひとりの努力が大事だといえる。
脳のネットワーク(神経回路)は、快適な情報を少しでも多く存在することを欲している。脳の健全化のためには、どうしても楽しい、前向きな情報が必要なのである。そのことで神経回路は健全に機能するからである。
生命科学者の柳澤桂子氏は、2002年のNHK人間講座「生命の未来図」のなかでこう述べている。
「私はよく、『神』はいるかと聞かれます。私は『いる』と答えます。けれども、その神は、私たちの頭(脳)の中にいるのです。どの民族も何らかの神を持っています。私たちの脳の神経回路が神の存在を必要としているのだと思います」と。
私たち人間は、35億年の生物進化のなかで、複雑で高度な精神活動を、高度な技術と経済力に裏打ちされて、脳をつくりあげてしまったようだ。一歩間違えれば、この地球そのものを破壊するまでにもなっている。
市場経済による激しい競争社会は、神と悪とが求め相争う人間の心となり、自己中心性ももはや当然という社会になった。
そこには、明るい光の面のみに価値をおいて、人間の弱さや悲しみは影の部分となり、マイナス価値として切り捨てられる。人間社会にとって、弱さも悲しみも大切なものなのに、生産性や効率が悪く、役に立たないと切り捨てる。
その結果、一面的にしかとらえられなくなり、相手の屈折や影の部分を思いやることができない人々が増えている。
人間にとって重要なことは、自分とは違う価値観を持つ他者の存在を知ることであり、その他者の存在を見失うような時代では、健全な心は育っていかないだろうし、危い不安定な時代になってしまう。今、そんな時代だ。
この時代、私たちの「心」はどこへ向かって行くのか。私にはよく分らないが、一つ言えることは、この天地自然があって、この生命があり、そこに心があることを強く自覚し、自然への畏敬の念を燃やすことが、心を創る源ではないのか、ある面からみれば、論理よりも人生であり、人生の意味より人生そのものを愛することではないのか---。人生は誰もが、たった一回しかないのだから……。
チベット仏教のダライ・ラマ氏の言葉のなかに、このような記述がある。
---人生の目的は幸福と快さにあるというのが、私の基本的理念である。心の安らぎなしに幸福な人間として生きることは難しい。
安らぎは人生のなかで、最も重要な体験なのだ。心の安らぎを得る源は、善き心である。
憎しみ、執着、慢心、疑い、恐怖は心を喪失し人生がない。よき人生を送るために善き心を培う必要がある。温かい心、やさしさ、愛である。癒しは、薬や治療のなかだけではなく、患者の心にある---と。
私たちはフィジカル(physical)な存在であると同時にスピリチュアル(spiritual)な存在でもあり、「心と生命」を探るとき、心は自らの努力で創っていくものであり、そのためには、脳そのものの生化学や生理学、解剖学をも十分に学び、知ることが必要である。
それらの学びから、この心というものの本質的な存在が、分ってくるに違いないからである。
生きる基本は電気か(生化学)
私たちが、集中して物を考えたり、討論をしたり、脳が能動的に働くとき、脳のなかの神経細胞の単位であるニューロンは、数百億から1000億個以上あり、このニューロンが網目のように巨大で、密な神経細胞(ニューロン)ネットワークが情報交換のため、はげしく行き交う。
神経細胞は、樹状突起が数多くある。この樹状突起は細胞質と同じだが、他の部位から情報を集める突起である。
そして情報は、細胞体から、軸索という神経突起の中の多くの軸索細胞の中を電気信号となって、他のニューロンヘ情報を素早く伝達していく。すなわち軸索は電気信号化した情報の通る道である。
この軸索の外側には、髄鞘という、軸索中の電気がもれない鞘で覆われた絶縁体がある。
この髄鞘(ミエリン:myelin)があるため、ニューロンネットワーク間を流れる情報が飛躍的にスピードを速めることができ、軸索を通る電気信号は、高度に絞り込まれた情報のネットワークが、想像を超える数の組み合わせによって成り立っているのだ。
私たちが脳を働かし生きることは、前に述べたように刺激が、電気信号となって伝わっていかねばならない。ニューロンは一種の電気が通るケーブル(電線)でもある。
とにかく感覚器官から情報を取り入れ、その情報を筋肉細胞に伝えて運動をコントロールしたり、また情報を統合して、思考や判断をするわけだ。
神経細胞には、グリア細胞が、まるで膠のように神経細胞にくっついている。このグリア細胞は神経細胞に栄養を与える重要な働きをしている。グリア細胞には、星状膠細胞、希突起膠細胞、小膠細胞などがある。
前に述べた髄鞘が破壊される厄介な疾患がある。これを脱髄性疾患というが、先天性のものや、原因不明など、その発症はよく分っていない。病気としては、多発性硬化症が代表で、いわゆる難病(特定疾患)に指定され、日本人より欧米人にその発症例が多く、問題になっている。感覚、行動、視力、排尿、運動などの障害が症状としてあり、20〜40代の人々に発症をみている。
さて、多くの情報刺激から神経細胞が興奮する。その能動輸送は、軸索内の細胞内のイオンが深く関係している。すなわちイオンの濃度は、細胞の内側と外側では、かなり異なっており、細胞膜の外側に対して細胞の内側では電気的にかなり差がある。
細胞膜の外側に対して細胞の内側では電気的にマイナスになっている(静止膜電位)。
ところで、私たちの精神活動や肉体活動は、「静」と「動」であり、外部からの刺激によって神経細胞が興奮し、その興奮が、次から次に神経細胞に伝わる(軸索に伝わること)。
この現象が起こることで、思考、判断など「心」が発生するのだ。
この興奮が神経細胞の内部(軸索細胞)をドミノ倒しのように素早く伝わっていくのである。
ここで注目すべきことは、興奮していない状態では、神経細胞の内側では、およそマイナス70ミリボルトだが、外部からの刺激が加わると、細胞膜にあるナトリウムイオン用の穴が開き、細胞の外側にあるナトリウムイオンが内側に入ってくる。その結果細胞膜の内側の電位は上昇し、マイナスからゼロに近づき、さらにおよそプラス40ミリボルトにまで上昇する。(脱分極という)この軸索内の細胞の電気的現象が、次から次に伝わっていくことになる。
前に述べたが、私たちの脳は数百億から1000億個以上のニューロンからできているが、その一つ一つに無数の樹状突起を持ち、そこにも情報を得るシナプス(synapse)という連絡点があるが、ニューロン、の軸索から伝わってくる情報を受け止めて、他のニューロンに伝える連絡点であるシナプスがある。
一つのニューロンには数十から数万ものシナプスがあり、そこに他のニューロンから入ってくる情報もあり、そのネットワークは想像以上の数の組合せとなって成り立っているという。情報は、快適なものも不快なものも流れる。シナプスでは電気信号から化学伝達となり、数多くの多種類の神経伝達物質が、このシナプスを化学的に伝えて受容体に組み込まれていく。その神経伝達物質が、私たちの心やからだの状態をよくも悪くもする。
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