2002/11/01
7.スポーツ選手のための栄養プログラム(4)
〜プログラムの実例〜
プログラムの実例を示します。
●ケース1
女性フィットネス・インストラクター(35歳)
[プログラム開始時の状況]
6カ月後のコンテストを控え、本人は減量を最大の課題としていました。食事の内容と食習慣、体脂肪率と組織量のチェックと血液検査を行った結果、カロリーのとりすぎを気にするあまり炭水化物の量が少なすぎ、明らかなビタミン、ミネラルの欠乏が認められ、鉄欠乏性貧血の状態でした。
また、本人が常に疲労・倦怠感、腰と膝の痛みを訴えており、爪のもろさにも悩まされていました。
そのためコンディションの維持・向上を基本方針に、食生活の改善とサプリメントの投与により問題解決を図ることにしました。
[具体的プログラム]
1.摂取カロリー制限
開始〜2カ月目:2,000 kcal
3カ月目:1,800 kcal
4カ月目:1,600 kcal
5カ月目:1,500 kcal
6カ月目:1,200 kcal
2.PFC比(たんぱく質:脂肪:炭水化物)
開始〜3カ月目:20%:20%:60%
4〜6カ月目:25%:10%:65%
3.高単位サプリメント投与(投与サプリメントについては後述)
ウーマンズ・チョイス 1パック (夕食後)
B−50コンプレックス 1錠 (朝食後)
C−1000コンプレックス 1錠 (朝食後)
Eー400 IU 1錠 (朝食後)
オイスターシェル・カルシウム 1錠 (朝食後)
プロテインプラス 1錠 (毎食後)
[結果]
減量に関しては組織量を維持したまま体脂肪だけを落とすことに成功しました。摂取カロリーは減らしながらもビタミン、ミネラルを確保することで、6カ月間を通じてトレーニングのマックス値は上昇を続けました。
腰と膝の痛みに対しては、組織を強化し、酸化を防ぐことで細胞の老化を防ぐといわれているビタミンCとEを通常の2倍投与した結果、痛みは大幅に緩和されました。また、ビタミン、ミネラルの投与により爪のもろさも解消しました。
疲労・倦怠感については自覚症状の面でかなり改善され、発汗量、尿の量、回数が増えたことから代謝がアップしたことも明らかで、全身状態が良くなったものといえます。これは、血液検査結果で鉄の欠乏状態が解消され、肝機能、腎機能が激しいトレーニングや低カロリー食にも関わらず改善されたことからも裏づけられています。
●ケース2
男性アメリカン・フットボール選手(26歳)
[プログラム開始時の状況]
ハーフ・バックからタイト・エンドへのポジション・チェンジによってよりハードなボディ・コンタクトが求められることから、6カ月間で71kgの体重を80kgに増やす必要がありました。
食事内容と食習慣の調査からは、総摂取カロリーが少なく、空腹を満たすために糖質中心の食事になっている上に脂肪の比率が高く、たんぱく質、ビタミンB1、C、鉄の不足が見られました。また、朝食を抜いたり、短時間にどんぶり物などの単品で食事を済ませるなど、社会人選手であるが故の問題もありました。
さらにトレーニングと食事の関係がうまく理解されておらず、ウェイト・トレーニングの仕方にも問題がありました。
そのため筋肉を増やすことを第一目標に、栄養バランスを良くし、サプリメントを投与し、効率の良いトレーニングを行うことで、コンディショニングに注意しながら体重増加を図ることにしました。
[具体的プログラム]
1.1日4,000 kcal食の実施
2.PFC比=20%:20%:60%
3.高単位サプリメント投与
エグゼクティブ・チョイス 1パック (夕食後)
C−1000 1錠 (朝食時)
E−400 IU 1錠 (朝食時)
プロテインプラス 1錠 (毎食後)
4.週3回の専任トレーナーによるウェイト・トレーニング
[結果]
血液検査についてはプログラム期間中何の異常も示すことなく、体重は体脂肪が減りながら組織量だけが増えるという理想的な結果を示しました。
●ケース3
女性マラソン・ランナー(26歳)
[プログラム開始時の状況]
10000mからマラソンに転向したことにより練習での走行距離が大きく伸びたため、疲労がピークに達しており、血液検査の結果からは女子選手に多く見られる鉄欠乏性貧血の徴候が出ていました。
また、食事の内容をチェックしたところ、栄養のバランスが悪く、総摂取カロリーもかなり低いため、ビタミン、ミネラルが不足し、低血糖による甘い物への欲求が非常に強い状態にありました。
一方、トレーニング・コーチから「かつて拒食症を経験しているため、食事に関しては非常にナーバスになっている」とのコメントがあったため、総摂取カロリーや食事の量については触れず、具体的な数値目標を定めることはあえて避けました。
そのため、栄養のバランスに気を配り、摂取すべき食品群を示し、サプリメントを投与することでコンディショニングを図ることを目標としました。
[具体的プログラム]
1.複合炭水化物をとる
2.乳製品を増やす
3.動物性たんぱく質をとる
4.緑黄色野菜、果物をとる
5.高単位サプリメント投与
アスリート・チョイス 1パック (夕食後)
プロテインプラス 3錠 (毎食後)
オイスターシェル・カルシウム 1錠 (夕食後)
[結果]
血液検査の結果から、サプリメント服用時には血清鉄が増加し、鉄欠乏性貧血の徴候も見られらくなり、疲労感もかなり解消されました。また、食事内容のバランスの改善に伴い、甘い物を好むという偏食の傾向も改善しました。
●ケース4
高校野球投手(17歳)
[プログラム開始時の状況]
激しい練習が休みなく続くため、常に肩や腰に重さを感じ、疲労感に悩まされ、けがや故障も多く、以前の骨折の予後も思わしくない状態でした。また、血液検査では鉄の欠乏状態が顕著に現れており、食事も好き嫌いが多く、脂肪のとりすぎ、清涼飲料水の飲みすぎの傾向がありました。
このような状況の下、投手というポジションも考慮して、基礎体力づくりと並行して筋量の増加をねらい、同時に鉄の欠乏状態の解消をめざしました。
[具体的プログラム]
1.完全休養日をつくる
2.体重1kgあたり2.5gを目安にした高たんぱく食
3.母親を含めたカウンセリングによる栄養指導
4.高単位サプリメント投与
マンズチョイス 1パック (夕食後)
プロテインプラス 3錠 (毎食後)
B−50コンプレックス 1錠 (夕食後)
[結果]
体脂肪はほとんどそのままに筋量を増やすことに成功した後、適度の休養をとりつつ正しいウェイト・トレーニングした結果、スピードガンによる測定では平均球速が10km/h以上アップしました。
また、本人の言葉を借りると寝起きが非常に良くなり、肩や腰の重さも感じなくなり、慢性的な疲労感も解消しました。
プログラム最後の血液検査結果から鉄欠乏状態も明らかに解消していましたが、この時、参考のためサプリメントを投与していない同じチームのレギュラー・メンバー9人に同時に検査を実施したところ、6人が明らかな鉄欠乏状態を示していました。
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