栄養プログラム

スポーツ選手のビタミン・ミネラルなどの栄養摂取量を考える、

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2002/11/01

6.スポーツ選手のための栄養プログラム(3)

〜プログラム実施の柱〜

選手の食事内容の調査の結果、ビタミン、ミネラルのうち、摂取量が一般人を対象とした所要量にも満たないものがあることが明らかになりました。
日本ではまだスポーツ選手向けの栄養摂取量の基準というものがありません。アメリカを中心としてビタミンの大量投与による様々な成果が報告されている中、食事の内容に気を配ることはもちろん、ビタミン、ミネラルのサプリメントの摂取にも積極的に取り組む姿勢が望まれます。


ビタミン、ミネラルはそれ自体エネルギーになるものではないため、食事の代わりにはなりませんが、「体がだるく疲れが残る」「風邪をひきやすく治りにくい」「集中力が持続しない」「筋肉が硬く、よくけいれんしたりつったりする」「関節に痛みがある」「血糖値コントロールがうまくいかない」といったスポーツ選手に良く見られる症状の改善には非常に効果があります。

さらに今回行った血液検査の結果、女性と高校生のスポーツ選手に明らかな鉄の欠乏が見られました。鉄不足イコール貧血ということではないにしろ、こうした状態は速やかに改善すべきです。鉄欠乏性貧血が明らかな場合、ヘモグロビンが減少し、赤血球が小さくなるため酸素運搬能力が低下し、その結果運動能力が低下します。

夏期は特に発汗によりミネラルの排出が増加し、暑さによる食欲不振で摂取するミネラルが減少するため、鉄を始めとしてミネラル不足に陥りがちです。
また、女性は生理によって、成長期にある人はその成長のために鉄の所要量が増加するため、鉄欠乏状態に陥りやすいのです。
鉄は非常に吸収されにくいミネラルですが、動物性の食品に含まれているものは吸収されやすく、ビタミンCやたんぱく質がその吸収を促進します。そのため食事の内容を改善するとともにサプリメントの形で摂取することが必要です。

スポーツ選手はけがや疲労感をおしてでも激しいトレーニング、試合に臨むことが当然であるかのごとくされてきた中、マルチビタミン、ミネラルのサプリメントの投与と食事内容、食習慣の管理によって、選手の体感は明らかに異なってきます。これを単に気のせいだなどといってその効果に目をつぶってしまうのは、あまりにも消極的な態度といわざるを得ません。

プログラム実施の柱

1.選手には休養が必要

選手のけがを減らし、効率の良いトレーニングを実行するためには疲労をためないことが重要です。疲労のサインは、本人の自覚症状はもちろん、他人から見てもすぐにわかるものです。疲労が蓄積してくると、集中力をなくし、運動能力も落ち、質の高いトレーニングが望めないばかりか、けがのリスクが極端に高まりますから、選手も指導者も、疲労をためないトレーニングスケジュールの管理と、疲労が蓄積した場合は完全な休養をとる姿勢を持つことです。
トレーニングスケジュール自体が無理のないものであるかどうかを知るため、また、選手のコンディションを管理する意味においても定期的に血液検査を実施し、そのデータを積み重ねていき、選手個人個人の状態を把握し、状況の変化に速やかに対策をとる姿勢が必要です。食事やサプリメントなどによる管理はもちろんですが、血液検査結果からオーバートレーニングによる可能性が高い場合はトレーニング内容を見直し、休養を増やすことが選手の状態の改善に最も効果的です。

2.エネルギー源を確保する

エネルギー源となる栄養素は、糖質、脂肪、たんぱく質です。そのうち特に運動のエネルギー源となるのは糖質と脂肪です。たんぱく質を運動エネルギーとして使う状態はそのエネルギー生成工程が複雑なために効率が悪く、内臓に負担をかけます。 持久力、瞬発力どちらが重要視されるかによって多少の違いはありますが、糖質が最も効率がよいエネルギー源です。糖質は筋肉中にグリコーゲンとして貯えられ、その筋肉を動かすエネルギーとなります。つまりグリコーゲンを多く貯えている筋肉の方が長時間の運動に耐えられるということです。 マラソンなどで有名になったグリコーゲン・ローディングはまさにこの考えを実践に用いたものです。日本人は欧米人に比べて総摂取カロリーが少ないため、糖質の割合の高い食事はしているもののその絶対量は不足している場合が多いようです。スタミナのある体づくりのためには適量の糖質を確実にとることです。

3.良質のたんぱく質をとる

体をつくる場合には、そのもととなるたんぱく質やミネラルを確実に補給することが必要です。成長期にあるスポーツ選手は、特にその量、質ともに管理が必要です。大人の場合は、特に質の向上に重点を置く必要があります。たんぱく質が筋肉づくりのもととなるという考え方が浸透するとともに、補助食品としてプロテインを摂取する人が多いようですが、とった分だけすべてが筋肉になるのではなく、とりすぎると肝臓に負担をかけたり、トレーニングとうまく組み合わせないと脂肪として蓄積されてしまいます。 たんぱく質はその構成のもととなるアミノ酸のバランスの良さで良質のたんぱく質であるかそうでないかが決まります。余分な脂肪をつけることなく、即エネルギー源となる糖質を確実に補給しながら、必要なたんぱく質を確実に補給するためには、いろいろな食品を組み合わせて食べる習慣を付けることです。

4.ビタミン、ミネラルをとる

スポーツ選手のエネルギー代謝は一般人のそれと比較して非常に大きく、特に瞬発力を必要とする競技では、その最大の力を発揮している時にエネルギー代謝に関わるビタミン、ミネラルがどれほど消費されているかを知ることはできません。

ビタミンB群は糖質、脂質、たんぱく質の代謝に補酵素として関わっています。また、神経の働きとも大きく関わっていることからも、特にスポーツ選手には欠くことのできないビタミンといえます。常に疲労感、倦怠感がつきまとう選手にビタミンB群のサプリメントを投与すると、その症状は改善されます。また、発汗量が増え、尿の回数が増えるという人もいます。

酸素摂取量の多いスポーツマンにとって細胞の酸化、つまり組織の老化の原因となる活性酸素の害を打ち消すビタミンA、C、Eは注目に値します。それぞれが運動能力のアップ、体の組織の強化、免疫力の強化といった報告が数多く出されている中で、こうした脂溶性のビタミンをサプリメントの形で摂取することが必要です。
丈夫な骨を保つためにはカルシウムが必要なことはいうまでもありません。カルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶けだし、溶けだしたカルシウムは関節に沈殿し、関節炎を引き起こし、また、カルシウム不足は筋肉のけいれんの原因にもなります。

たんぱく質のとりすぎもカルシウムを骨から溶けださせます。骨からカルシウムが溶けださないようにし、常につくりかえられている骨を丈夫に保つするためには、単独では非常に吸収されにくいカルシウムをリン、マグネシウムとのバランスをとって確実に補給することが必要です。

スポーツマンは激しい発汗、代謝によりミネラル不足に陥ることがあります。ミネラルの欠乏は、何となく調子が悪い、疲れやすいなどの漠然とした状態で現れることが多いため、積極的にミネラル不足を補おうという選手は多くありません。
しかし、特に女性スポーツ選手の鉄欠乏状態は数多く報告されており、加工食品に頼りがちな現代人の食事、ひとり暮らしの食事、緑黄色野菜の摂取不足、日本の土壌の特徴などからミネラルの不足が取りざたされている現在、過剰症を起こさないレベルで確実にミネラルを補給する必要があります。

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