医療とは

患者にとって、よい医療とはいったないなにかを考える。

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2006/02/07

4.医師と患者(4)

〜よりよい医療とは〜

主治医の必要性

よりよい医療は、いうまでもなく、医師と患者(その家族)の親密な人間関係が第一だ。
あなたのからだのこと、生活のこと、互いに地域でよく知りあっている主治医を持つことは大事なことだ。

生活習慣病など、慢性疾患が多い今日「いかに信頼のおける主治医を持つかが重要であり、なんでも遠慮なく話しあえるような医師が主治医としては最高だ。
しかも、その主治医は各専門医の医療機関とネットワークを十分に持っていなくてはならない。

多くの医師たちは、日常臨床で多忙であり、よりよい医療の提供をしようと日夜努力をつくしている。

医師への不信

それにしては、医師に対する不信感が強い。
その大きな原因にはいろいろあるが、医師のミス、すなわち医療過誤による患者被害が増えていることが大きな要因の一つになっている。

いわゆるリピーター医師の問題は大きい。
同じ医師が、2回、3回、なかには5回以上も同じ医療ミスをしている。
もちろん、リピーター医師(勤務医)の場合、事件後は病院を解雇されて別の医療機関に移る。
そしてそこでまた、医療ミスを起こす。
そんなことから、一般には表面化しない。
損害賠償を民事裁判で要求されているが、その弁護士も、事件発生の期間のずれなどから他の事件を担当する弁護士と違うので、その実体が弁護士も医師会もつかめないという。

しかし、後で述べるが、医師賠償保険金の資金を、かなり喰う医師がでてきて、資金もきびしいなか、これらリピーター医師の存在とその数の多さがわかってきたという。

また、リピーター医師について、同僚の医師でさえ、医学的な勉強が足りない、しかも技術力も低い、病院内でのルールを守らないなど---よくいう医師はいない。

医師の組織である医師会や医師免許を出した厚生労働省が積極的に、これら医師に対する策を急ぎこうじなくてはならない。

平成15年には、リピーター医師によって被害を受けた患者たちが、免許を与えた厚労省(国)に対して賠償訴訟を提訴している。

医療事故、事件を起こして、民事裁判で責任が認められても、一般に、実名で公表されないことが多く、私たち国民は知ることはできない。しかし、勤務医の場合など急に退職するなどから、噂さとして、なんとなく患者たちは知っている。とにかく、安心して、医師にかかりたい。当り前のことだが、この医療の本質が、ゆれだしているようだ。

それにしても、詳しくは省略したが、前回述べた2000年、S医大総合医療センターでの抗がん剤過剰投与による死亡事故で、主治医に対して「医業停止3年6月」という処分。この医師は民事だけでなく刑事でも有罪(禁固2年、執行猶予3年)となっている、医師以前の薬の説明書を単純に間違うというミスで死亡させたのだ。

2002年、T医科大学A病院の腹腔鏡手術ミスで患者死亡。執刀医3人、2人が「医業停止2年」1人が「医業停止3月」となり、刑事処分はまだ出ていない。

この事件は不勉強の3人、しかも、どうみても人体実験としかいえない医療行為である。
この二つの医療ミス---医師の免許取り消しはない。なぜなのか、一般国民からみれば、何かおかしいぞという目を持っている。不満でもある。医師の世界は特別なのか---国民感情は、やがて、これら甘い処分を許さなくなる時代がくるにちがいない。

医道審議会の変化が?

行政処分によって国は医師免許を取り消すことができる(医師法7条2項4条)。

そのためには、厚労大臣は、あらかじめ医道審議会の意見を聞かねばならないことになっている。

この審議会は厚労大臣の諮問機関で、日本医師会長、日本歯科医師会長、及び学識経験者などから構成されている。七つの常設分科会があり、そのうち医道分科会が医師及び歯科医師の行政処分を審議する。

---医師免許取り消しについては、麻薬の中毒者、罰金以上の刑に処せられた者、医事に関し、犯罪または不正行為のあった者、医師として品位を害するような行為のあったとき医師免許取り消し、または医業停止を命ずることができるとある。

しかし、平成14年に入り、「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について、国民の医療に対する信頼確保に資するため、刑事事件とならなくても、医療過誤についても、医療を提供する体制や行為時点における医療水準などに照らして、明白な注意義務違反が認められる場合などについては、処分対象として取り扱うものとし、具体的な運用方法やその改善について、今後早急に検討を加えることにする」という方針を発表した。
刑事事件にならない医療の過失でも医師免許取り消しなどの処分の日がやってくるにちがいない。

医師免許にも改革が

国家試験に合格すれば医師免許が得られるが、すぐに一人前として患者に治療を行うということにはならなくなった。

やはり、最近の医療不信の解消に向かうため、平成16年4月より、実施された医師免許後、2年間の全科研修義務化である。
それは七科(内科、外科、救急部門(麻酔科も含む)、小児科、産婦人科、精神科、地域保健等の診療科目)を2年間で全部研修するということである。かなり研修は盛りだくさんで、内容は義務化されたが、研修が中途半端にならないかと危惧する専門家もいる。

医師賠償保険にも問題が?

日本医師会の医賠保険の一事故の最高補償額は一億円だが、高額賠償に対応するため、平成13年に特約保険制度が創設され、一事故で二億円まで支払われることになった。保険の掛金は医師会の会費に含まれているという。

医療過誤によっては、不幸にも患者死亡もあったり、後遺症の問題などと数千万円〜数億円を裁判で原告から要求されることも少なくない。

自賠保険にも財源があり、最近はきびしいときく。患者対応には、医療裁判に習熟した顧問弁護士が当たり、被告医師は、勝手に非を認めるわけにはいかない。勝手に非を認めれば、自己負担が大きくなる。

民事裁判では、かなりきびしい裁判上の掛け引きが展開される。
どうしても、時には真実からかけ離れて、医療過誤の本質が分からないことになりかねない。しかも長期間裁判に月日がかかり、原告も被告も、かなり疲弊することになる。
なかには真実を隠すための方便になりかねないこともある。
医師と患者(家族)の関係は、暗くおかしくなりかねない。そしてさらに医療への不信を大きくしてしまう。

どうすればいいのか、難しいことだが、日頃から互いに隠しごとなく談笑したり、苦言をよく互いに聞いて、少しでも医師と患者の関係の絆を失わない努力であろう……。(おわり)

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