個人情報保護法

医療機関においての個人情報保護法について考える。

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2006/02/06

1.医師と患者(1)

〜医療機関における個人情報保護法〜

個人情報保護法の施行

2005年4月1日から、医療機関においても個人情報保護法の施行がなされた。これによって、医療の質が向上するのかは、これからの課題である。
従来から、医療の世界では厳しい守秘義務が、法的に定められている。


医師、歯科医師、薬剤師は刑法第134条の1項。
保健師、助産師、看護師、准看護師は、保健師助産師看護法第42条の2。
診療放射線技師は、診療放射線技師法第29条。
臨床検査技師は、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律第19条。
理学療法士、作業療法士は、理学療法士及び作業療法士法第16条。
視能訓練士は、視能訓練士法第19条。
臨床工学士は、臨床工学技士法第40条。
救急救命士は、救急救命士法第47条。
言語聴覚士は、言語聴覚士法第44条。
精神保健福祉士は、精神保健福祉士法第40条。
歯科衛生士は、歯科衛生士法第13条の5。
歯科技工士は、歯科技工士法第20条の2。

となっている。

しかし、個人情報保護法では、これら各個の守秘義務のみならず、事務職をはじめ、パート従業員、ボランティア、退職者、出入りをしている検査センター職員など、医療機関そのもののプライバシー保護とカルテ開示など、患者主体の医療の確立を目指した一歩、二歩、前向きな法の施行となっている。

医療機関における個人情報には何があるかだが、診療録、処方せん、手術記録、助産録、看護記録、検査所見記録、X線写真、紹介状、退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約、調剤録、診療申込書、問診票、レセプト(診療報酬請求書)などがある。

介護関係事業者における個人情報の例としては、ケアプランなど、サービス提供にかかわる計画録。提供したサービス内容等の記録、事故の状況等の記録等などがある。


この法律の制定には、OECDの「プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドライン」が背景になっており、医療機関のみではなく、銀行や保険会社等にも施行義務がなされた。

この法で、大きく変革した点は、多くの患者情報の所有は、患者のものになったことである。医療機関としては、これら患者情報を、患者からお預りしているということになる。

したがって、患者の医学情報を活用する時は、患者の同意を得なくてはならなくなる。とにかく、診療情報の扱いに関する決定権は患者にあるということだ。
たとえば、患者の家族が、患者の病状を医師にたずねても、家族といえども患者の許可がない限り、医師は病状を家族に話せないことになる。

また、カルテなど自分自身の医学情報の開示を、患者自身が申し出たとき、医療側は拒否することはできないことになる。
この法の主旨は、個々の守秘義務だけではなく、医療機関全体として組織的に管理体制を作り、実践していくことを義務化したのだ。

そこで、各職員一人ひとりから守秘義務を守る「誓約書」を提出させたり、外来等で、患者名を呼ばない、病室の入口(廊下側)のネームプレートを中止する(室内に示す)とか徹底した患者主体の医療を実施するようになった。
さらに、当病院では、どう患者のプライバシーを守っているかを掲示することも義務化している。また、苦情、相談窓口の明確化の必要性も義務化している。

ある医師会の講習会では、警察などから問い合わせがきても、こちらから番号を確認してから折り返し電話をして答えなければならないとか、弁護士からの質問に対しては、利害関係が絡む問題があるので、簡単に答えてはいけないとか、いろいろとこの法の実践について話題になったという。

医療は、法的にみれば、民法の契約になる。医療では、従来から、患者を、医療の客体と捉える立場が支配的であったが、一方、患者主体とならなければ、診療契約は成立しない。

医師も、医療の主体であり、患者も、医療の主体と捉えるとき、医療の実践において、近代的な医師と患者の関係ができ上るといえる。
そして、そこに患者の自己決定権、自己責任、医師のプロフエッション(profession)としての義務と責任など、医師と患者間の明確化ができあがる。
この法の施行が、医療の質の向上に繋がるかは、実施されるなかで相方が有効的(友好的ともいえる)努力が必要となろう。

医師の説明不足か?

医師は気づいていないようだ。
一生懸命説明して、患者は満足して帰宅。
しかし、患者は、決して満足していない。こんなことはよくある。

『やはり先生には余計なことは聞けません。言われていることを理解することだけでも大変です。分ったような顔をしないと申し訳ありませんから・・・。お医者さんは、お医者さんです。えらい人だからです。からだをおまかせしており、嫌われたりしたくありません。』

先日、C型肝炎で医学管理を受けている60歳代の主婦の発言だ。
そして、どうも心配なので、きいてほしいというのだ。
その内容はこうである。
先日、新聞に、ペグイントロンによる治療で、C型肝炎、ほぼ半数完治。厚労省が新指針---という記事をみて、かかりつけ医に、このことを自分の場合にはどうかとたずねたのである。
この主婦は、一年ほど前にインターフェロンの注射による治療を受けている。

「この薬はいかがですかと聞いたのですが、先生は、はっきり答えてくれません。ぽつんと、あと5年くらいが・・・」と言い、少し考えてから「やるなら早いほうが・・・」と言って口ごもったというのだ。
忙しい外来、それ以上は聞かず、よろしくと頭を下げて帰宅したという。
主婦が不安にかられたのは、「あと5年くらい」ということと、「やるなら早い方が・・・」と口ごもった医師のあいまいな態度だ。
5年くらいかな---主婦は年齢も年齢だ。この寿命があと5年なのかと思ったことと、「やるなら早い方が」で、自分のC型肝炎はかなり進行しているのかも知れないと不安でいっぱいになったのだ。

C型肝炎は、ウイルス(HCV)による感染が原因で、肝細胞が破壊される疾患である。加齢ともに発症リスクが高まり、感染してから20〜30年ほどでおよそ30%の人が肝硬変になり、30〜35年で肝がんになるといわれている。
輸血や汚染血液を使った血液製剤を介したり、子どもの頃、注射針を変えずに受けた集団接種などもあるが、感染の原因がよく分からない人も多い。

従来のインターフェロンとリバビリン併用医療の倍にあたる約1年の長期治療が、ペグイントロンでは可能になるのだ。
患者の立場からすれば、当然、この治療法が実施できるか、知りたくなるのは当然である。(つづく)

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