時間治療学会

上出洋介教授と池永満生教授の発言から命について考えてゆくコラムです。

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2004/03/22

4.太陽・地球・生態系と時間治療学会に参加して(2)

時間宇宙学

第 1回の研究会で(平成12年11月)、大塚邦明教授は、新しい科学としての「時間宇宙学」と題してこう述べている。

----生体には、サーカディアンリズムをはじめとして様々な周期のリズムが存在する。この生体リズムは、言うまでもなく太陽系の地球といった惑星の周期性に適応した生命機構である。このリズムの法則は原核生物、真菌、ショウジョウバエと、まことによく似た分子生物機構で構成されていることは、驚きであり、種を越えた発現機構の普遍性は、生体リズムが生命にとって根元的な現象であることを示している----。

上出洋介教授の発言

同じく第 1回の研究会で、オーロラ研究の第一人者である名古屋大学、太陽・地球環境研究所長の上出洋介教授も注目すべき発言をしている。

----私たち人間を含む地球上の生命が、実は二つのバリアーによって宇宙の厳しい環境から護られていることに、私たちはふだん気づかずに毎日を送っている。

第一のバリアー、つまり地球の大気は、とるに足らない薄いヴェールであるが、この大気の層こそ、地上の生命を繋ぐ遺伝子を有害な太陽紫外線から護ってくれている。

地球の進化の過程で、生命が海だけでなく陸上にも生存できるようになったのは、大気と海の壮大なドラマが繰り返されたからである。地上百キロメートルで、この大気が終わり、そこから果てしない宇宙空間が始まる。

宇宙空間は、無の世界ではなく、高エネルギーの粒子、超高温の電離気体で満たされている。

そして生命を護る第二のバリアーは、地球のもつ磁場である。

この地球と宇宙のちょうど境で起きているオーロラが、地球の生命を護る二つの防護壁がいかに弱いかを示している。そして、太陽は常に変動しており、その影響を受けて地球の電磁気環境は絶え間なく変化していることを教えてくれている ----。

と、「地球の生命は、大気と磁場に護られている」という題で述べている。

その後、上出洋介教授は、研究会や新聞等でも発言。人類は宇宙に漂うか弱い地球に偶然誕生しているのに、地球だけは例外的な環境を持っているということに気づかないでいる。そればかりか、自然の仕組みを解明していくなかで、自分たちを破壊してしまう力を作ってしまったと警告をしている。

2003年2月1日午前9時(日本時間午後11時頃)に起きたスペースシャトル「コロンビア号」の惨事にも触れ、宇宙に出ることの恐ろしさ、宇宙に身をおくことが、普通の生活からは想像もつかないほど危険な行動であると述べている。


宇宙のなかの生命

第 4回の研究会(平成15年11月)では、宇宙開発と生命について、池永満生教授(京都大学放射線生物研究センター)の発言もあった。

米国、ロシア、欧州諸国、日本など国際協力による国際宇宙ステーションの建設が 1998年から始まっている。

宇宙環境は、地上よりも桁違いに多い宇宙放射線と、無重力に代表される特殊な環境である。

無重力で引き起こされる骨からのカルシウムの流出 (骨粗鬆症の原因)や筋肉の萎縮などは、宇宙飛行中に「自転車こぎ」などのようなトレーニングを行うことで、ある程度は予防できるという。しかし、宇宙放射線を避けることは不可能に近いという。

一般的に宇宙線というのは、銀河系のかなたから飛んでくる銀河宇宙線と、太陽からの太陽粒子線である。

幸い、地球は、大気層と地磁気との二重の放射線シールドのおかげで、宇宙線から保護されている。このことは、上出洋介教授が前にも述べている。

大気層は、放射線遮蔽材として使われている鉛に換算すると、約 90センチの厚さに相当する。また地球という磁石の磁場は、電気的に宇宙線をはね返す能力がある。

ところが、地上約 400qの国際宇宙基地の軌道上では、宇宙放射線の成分の約95%が陽子、約10%がα粒子、残りのおよそ1%が炭素イオンなどの重粒子であるという。

したがって、宇宙では放射線に被爆することを前提として、どの程度の影響があるかを予測し、宇宙飛行士の滞在期間に規制を設けるなどの対策が重要であると発言している。

そして、実際に、無重力状態で宇宙放射線に被曝した場合の遺伝的影響について、ショウジョウバエを使って実験を行っている。その結果、遺伝的異常や奇形が生じたという。

今後の課題として、無重力は免疫機能、特に癌細胞を殺す NK細胞の活性を低下させるという事実に注目する必要があるという。

とにかく地上 400qの宇宙基地では、1日当り約1oSv(ミリシーベルト)と推定される。この1oSvは、健康診断でX線胸部間接撮影の際に、一回の検診で胸の中心部分に浴びるX線の線量に相当する。長期の滞在による被爆はかなり厳しくなるといえる。

宇宙は、生命の存在に対して、大変厳しい環境である。この宇宙に対して、この地上がいかに生命の存在に安全であるか ----この地球の持つ自然性に、大いに注目すべきである。

地球は生命のためにある ?

しかし、この地球は、半径 6400qの、たかだか厚さ20qの生物圏に、へばりつくように生活する、地球生命の脆弱さを強く認識する必要があることだ。

私たちの暮らす地球の環境に、とてつもない大変化が起きたとき、生命の存在すらあやうくなる、地球内部に内在するエネルギーを知らねばならない。

太陽そして地球は、決して生命を育むために存在しているのではない。この生命は、偶然、存在させてもらっているのだ。

このことを私たち人間が、いちばん思い上がっていて、その自然性を知らないのではないか ----この研究会に参加して、今、私は強く感じる。

この美しい地球を、私たちは育まなくてはならない ----。

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もりもり盛りあがる雲へあゆむ (山頭火)


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