体内時計

体内時計の役割とメカニズニについて解説。

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2004/03/22

3.太陽・地球・生態系と時間治療学会に参加して(1)

この研究会が発足して、今年で 5年目に入った。秋深い11月に、研究発表が行われている。

医学の立場だけでなく、地球物理学や宇宙学の専門家も加わって、数多くの研究発表が行われている。この研究会のテーマは、地球に生命が存在する ----その本質は何なのか、常にこのことを追い求めている。研究会のテーマは大きい。

私が、この研究会の代表世話人である東京女子医大教授、大塚邦明氏にお会いしたのが、たしか平成 6年、今から10年前になる。

大塚邦明教授の講演を聴いて、大きな驚きと医学の広さを知った。循環器 (高血圧、心臓病など)の専門医である大塚邦明教授のテーマが、今までの医学講座とはまったく視点が大きく異なっていたからだ。高血圧症や心臓病の対応を、宇宙という世界から分析し、捉えている。


大塚邦明教授の発言

常にこう述べている。大塚教授の本質がここにある。

----人として生きる特権を得た私たちは、常に太陽を中心として、宇宙との関わりを保ちながら生活をしている。宇宙と生命の関わりを理解せず、「治療の質」を高めることはできない----。

そこで、具体的に、その医学を追ってみた。

まず、地球誕生からほぼ 10億年を経た30億年前に、「ある生命」が誕生し、その生命は太陽の影響を受けながら進化を重ね、そしておよそ305万年前に、ルーシーと愛称される人類の祖先が誕生した。そして今から約15万年前、よく発達した脳を持つ現代人のホモサピエンスが登場した。

この人類の祖先は、常に太陽を中心とする宇宙の影響を受けながら進化を繰り返してきた。宇宙とあたかも共存する形で進化し、その結果得たものは「サーカディアンリズム」をはじめとする生体リズムであった。 24時間の周期で寝起きを繰り返す生活リズムが、生命の内部に完成された。

医学の立場から初めて、この生体リズムの重要性を主張したのは、大塚教授の師匠でもある、アメリカ・ミネソタ大学のフランツ・ハルバーク教授である。

彼は、当時のホメオスターシスの概念を持つ人々から激しく抗議を受けながら、「それでも内部環境は周期的に変動を繰り返す」と唱え続けた。

そして、この考え方が一般の医学研究者にも受け入れられた。

具体的な内容に入ると、心臓病の発症に周期性があること、人は生体リズムを持ち、地球上は太陽の影響を受けて明暗周期が繰り返され、この周期がほぼ 24時間----。

この身体は、この 24時間周期を都合よく体内に取り込み、その結果、24時間時計を脳の中に作ることに成功した。

時計遺伝子

その後、時間遺伝子が発見され、体内時計、生物時計という言葉で呼ばれる脳の細胞の働きが分った。

この時計遺伝子は、脳の視床下部の神経細胞の集合体である視交叉上核にある。

視交叉上核というのは、視神経が左右交叉して脳に入ってくる場所の、すぐ真上にある米粒くらいの神経細胞の集りである。左右に接近して 2個ある。これが生体時計の働きをする重要な場所なのだ。

それにしても、わずか米粒大の大きさである神経核が、生体におけるすべての 24時間周期をつかさどっているのだから、生命はなんと不思議なものか----。

24時間周期と生理現象

ここで、 24時間周期が証明されている生理学的現象をみてみると----。

睡眠と覚醒周期、副交感神経機能や交感神経機能の自律神経活動、副腎皮質ホルモンやカテコールアミンなど様々なホルモン分泌周期、血液の濃淡 (粘調度、たとえば濃い濃くないをみるヘマトクリット値)、血圧、心拍数、血液線溶能(血液が溶けやすいこと)、血小板、凝集能(血液が凝固しやすいこと)などが知られている。

また、心臓に血液を送る冠動脈の血液量まで変化していることも知られている。すなわち早朝に少ないのである。

このように生体リズムの変動から、心筋梗塞や狭心症が、午前 6時から11時の時間帯に多いのだ。その時刻を一つの治療の「鍵」として臨床分野に応用することが大事である。

多くの心臓病専門施設での調査も実施され、その結果、若年層 (40〜50代)の心筋梗塞発症と、65歳以上の高齢者の心筋梗塞の発症時刻の分布に、少し差がみられることがわかった。

しかし、いずれの年齢群においても、午前 6時から11時の時間帯に多いことには差がない。若年層の場合には、午前中だけでなく、午後2時から夜10時までにも心筋梗塞や狭心症がみられた。

生活リズムの節目に注意

朝と夜、睡眠と覚醒、安静と活動というように、生活リズムの節目に、心臓病が多くみられる。起床とともに血圧と心拍数が急激に上昇する。心臓の収縮力も急激に増大する。

このような現象は自然に生じるのだが、その結果として、心臓における筋肉 (心筋)の酸素を消費する量が増えることになってしまう。

すなわち、心臓における酸素需要が増大するが、酸素を供給する立場からみると、早朝は前に述べたように、心臓に血液を送る冠動脈の血液量が少なく、また、この時刻は血液も粘りこくなっている。さらに、血液は固まりやすく (血小板凝集能が高い)、溶けにくい(血液線溶能が低い)など、一日のうちでも、心臓への酸素供給が不十分になりやすい時間帯であるのだ。

起床から活動への時間帯は、生体リズムからみても、最も重要な病の予防対策を講じる時間帯であるといえる。生体リズムが予防にも治療にも重要な鍵となるわけだ。

時間治療学

生体リズムは、薬の効率を最大限に活用するためにも大きな鍵を握っている。病気の発症時刻を考慮した治療を図る努力だ。

たとえば、少量のアスピリンは、血管の内皮に作用して動脈硬化を防ぐことが明らかにされた (抗血小板作用、血栓を予防)。この薬は朝起床後の服用時刻で、その効果も大きくなる。また、胃・十二指腸潰瘍の治療薬は、朝より夜間(就寝前)に服用した方が効果が大きい(胃液の分泌は夜中に高まる)。

高脂血症の治療薬も、朝より就寝前に服用した方が効果が大きい。コレステロールなどは夜間に合成されるからである。

がん細胞の増殖は夜間に活発になり、骨髄活動も下がるので、抗がん剤の投与を夜間に行うことで効果も大きく、副作用も少なくなる。

生体リズムを考慮した治療は、今日では一般化している。大塚邦明教授らの研究成果は大きいといえる。

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